西洋名画を読み解く

09110901月刊誌「一個人」12月号の特集です。
今までこの雑誌を買ったことは一度もありませんでした。
タイトルに惹かれての初購入です。

例によって「またダ・ヴィンチか」という気もしますが・・(笑
まあ、タイムリーと言えばタイムリーかも知れません。
09110902アメリカだったか・・フリーマーケットで売られた名もない絵が、ダ・ヴィンチの作品リストにない真作の可能性が高いとか・・そんなニュースが最近ありましたからね。
時代が古く寡作だったこと、軍事や科学にも通じていたこと、左利きで「裏文字」を書いたこと等が相まって、世界でもっともミステリアスな画家の一人です。
正に日本人好みですよね。
09110903「キリストの生涯を知れば西洋絵画は100倍面白い」のコーナーはいいですよ。
ルネサンス以前の芸術とは正に「神に奉仕する」ためのものでしたし、それ以後もキリストとその生涯は多くの芸術家がテーマとしてきましたからね。
宗教画の登場人物に当てはめて、時の権力者の顔を描くことも普通に行われていました。
09110904「ギリシャ神話の五大美女で読む西洋絵画」も面白いです。
五大美女とは、ヴィーナス、ディアナ、ヘレネ、プシュケー、パンドラですが、特に「愛と美の女神」と言われるヴィーナスは多くの芸術家が描いています。
神に奉仕する芸術の時代には、裸の女性の絵画は殆ど存在しなかったのですが、ルネサンス期以後は、発掘された古代ギリシャの彫像になぞらえて多数の裸体画が描かれています。
09110905芸術作品にも、当然ですが世相が反映されます。
大理石の彫像のように、硬く均整が取れたスタイルで描く初期のヴィーナスから、より軟らかな生身の肉体を持ったヴィーナスに変わっていきます。
上の「ヴィーナスの誕生」(ボッティチェリ/1485年頃)と、下の「ウルビーノのヴィーナス」(ティツィアーノ/1538年)を比べるとよく分かりますね。
当時の画家は、権力者や豪商などのパトロンの希望に応じて描いていたので、彼等の好みの女性(愛人や馴染みの娼婦)をヴィーナスに仕立て上げることもあったようです。
現代で言う「ヌードピンナップ」のような目的の作品もあったんですね。(笑
印刷技術もない時代ですから、一部の金持ちにしかできないことですし、注文主の意図にかかわらず芸術品であることに疑いはありませんけれど。

名画と呼ばれる有名な作品であっても、それをただ見るのではなく、それに表現された物語や時代背景と一緒に考えながら見ていくと、今までと違ったものが見えてくることがあります。
興味のある方には、この「一個人」の特集はおすすめですよ。