山番

05033101粗末なブロックの壁、薪ストーブ、スコップ、飲料水のタンク。まるで山小屋の入り口のようなこの場所に、今日一日(弁当持ちで9時半から15時まで)居りました。

昭和20年4月、八ヶ岳南麓は長野県側から小淵沢、長坂、大泉、そして高根の吐竜の滝付近まで1,000町歩(3百万坪)が全焼するという大火災に見舞われました。
それ以来、この辺の地域には「山番」と呼ばれる制度ができました。空気の乾燥している冬期間、毎日地元の人が交代で山の見張りに行くのです。


05033102山番に出るのは、消防団とか特定の組織に属している人ではなく一般住民です。地域の隣組に入っている全戸から一人ずつ出て、二人一組で順に次の家に回していくのです。会社勤めの人は会社を休んで山番に出ます。どうしても都合が付かない場合は、他の日の人と交代してもらう事も可能ですが。
なお、雨の降っている日や、雪が積もっている間は火災の危険がないので山番はありません。

写真は小屋の外です。
大火の後に植林された落葉松は既に高さ30mにも育ち火の見櫓に登っても遠くを見渡す事は出来ません。さらに高齢者が増えた事で櫓に登る危険を考え、数年前からは櫓に登らなくても良い事になりました。今では、この小屋の中で一日を過ごすだけの事になりつつあります。とは言え、入山者に火の用心を呼びかけたり決められた時間に半鐘を鳴らすなど、仕事がない訳ではありませんが。
最近では、無駄だから廃止した方が良いという意見も聞くようになりました。
まあ、私も現実的には廃止に賛成です。でも山火事防止という実質的な面だけではなく、昭和20年の大火の恐怖と、それによって焼け野原となった八ヶ岳南麓をこれ程までに緑豊かな地に復活させてきた人々の事を語り継ぐ意味もあるのではないかと思っています。

“山番” への6件の返信

  1. そんな大火災があったんですね.全然知りませんでした.
    昭和20年と言えば終戦の年.
    3月の大空襲で東京は焼け野原だったでしょうから,八ヶ岳の大火災は地元でしか知られていなくて当然でしょうか.
    現実的には山番の意味はほとんどないのでしょうね.
    だから,廃止した方がいいというのは理解できます.
    でも,こういうのって大火災があった日を記念日にしてもきっと忘れ去られてしまうんでしょうね.
    面倒でも毎日続けていることが,記憶を風化させないためには必要なことなのかもしれません.
    緑豊かな八ヶ岳が今あるのは,こうしてずっと山番を続けてきた地元の方のおかげなんですね.
    これから八ヶ岳を訪れる時はそれを心に留めておきたいと思います.

  2. お疲れ様でした。
    実質的にはあまり意味は無いのでしょうね。
    でも持ち回りで一般住民が参加するという所に意味があるのでしょう。
    時々しか回ってこないのでしょうが、
    少なくともその時は山火事の事を考える良い機会になるはず。
    一人一人が注意しなければならない問題でしょうからね。

  3. 大変ですね!!山番。
    皆さんがおっしゃることは正しいと思います。
    どうしたら山火事は無くなるか、やはり人間の力は
    小さいですよね。世界中で災害が報道されて、今は
    恐ろしさが観えますから、容易に分かった気になって
    いますが、当時の火災を身近に見た人達は怖かったんで
    しょうね。本当にお疲れ様でした。

  4. tsuneさん、いらっしゃい。
    確かに東京大空襲の直後ですから、あまり話題には上らなかったでしょうし、
    地域外の人には知られていない事でしょう。
    実際的に山火事の早期発見という意味は少なくなりましたが、歴史を伝える
    必要はあります。
    そういう意味では必要な制度なのだと思っています。
    出来れば、観光で八ヶ岳に来られる方や、新天地を求めて来られる新住民の
    皆さんにも知っていただきたい事です。

  5. exifさん、いらっしゃい。
    おっしゃるとおり、一般住民が参加する事の意味は大きいですね。
    今の世の中、誰も暇な人は居ませんから「また山番だよ。忙しいのに。」とか
    「見張っていてどうなるものじゃない。」という言葉は殆どの人が口にします。
    私も実質的な火災防止効果だけなら無駄だと思います。
    それでも長い間続いているのは「必要とされている」からなのだと思いますし、
    それは尊重したいと考えています。
    順番はたいてい「一冬一回」ですが、晴天の多い年は二回まわって来る事も
    ありますね。
    まあ、その程度の頻度ですから、文句を言いながらも続けてこられる訳です。
    参加しない人が多くなれば他の人に負担がかかる訳で、当然そうなれば
    続けられなくなってしまいます。

  6. ASさん、いらっしゃい。
    確かに今はネットワークやメディアが発達して世界中の災害情報を映像で
    目の当たりにする事が出来ます。
    そういう意味では、多くの人が知ってくれるし考えてくれていると思います。
    でもそれは「大災害」と呼ばれる一部の災害でしかありません。
    現実に山に住んでいるとホントに小さな山火事でも怖いものですよ。
    一昨日、甲府市の山沿いでレストランが火事になり、それが山に延焼して
    住宅地の直前で鎮火したというニュースが地元紙に載りました。
    新聞には住宅密集地の裏山が炎に包まれている写真がありました。
    私がこちらに来て間もなく25年になりますが、消防が出動するような野火
    (森林火災ではなく原野火災)が3回ありました。
    その内1回は我が家から200mくらいの所に炎が見えましたよ。
    他の2回も1km程度の所でした。
    いずれも近くの民家の垣根を焦がす寸前で食い止められています。

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