凍りの掌-シベリア抑留記

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おざわゆきさんが描いた漫画。

ちばてつやさんの推薦に惹かれて手に取ったのですが、なかなかいい作品です。

作者のお父さんがシベリア抑留の経験者です。
長年語ること無く封印してきた体験の記憶を、作者の求めに応じて語りはじめ、それを作者が漫画として仕上げました。
決して雄弁には語られないお父さんの体験を、作者の・・どちらかと言えばこういう作品には不向きかとも思われるほのぼのとした絵によって淡々と描き綴られたことにより、より心にしみる真実の物語になっています。

私の父も徴兵により満州に出征し、そこで終戦を迎えています。
ただ、作者のお父さんのような遠隔地ではなかったため、ソ連兵の姿を見ることもなく復員することが出来たわけです。
それでも陸軍病院勤務兵だったので悲惨な話もあるし、日本への引き上げの過程の混乱した状況の話も聞いています。
それを自身の体験として語れる人たちは本当に少なくなり、私の父も10年前に亡くなっています。

これからは、その体験を親から聞いた私たちが何らかの形で後の世代に伝えて行かなければならないのだと、昨今の日本の世相・・特に集団的自衛権などという世迷言を高々と掲げ、日本を戦争に再び引きずり込もうとする輩が大手を振っている状態・・の中で、強く思う所です。